特集
市内中心部から上杉家御廟所へ向かうと「わくわく館」という看板が目に飛び込んできます。そこが齋英織物。大正12年創業の、米沢では比較的新しい機屋です。「米沢の染と織をたくさんの人に知ってほしい」という思いから、一般の人でも紅花染や、コースターなどの小物を、実際に機織り体験できるコーナーを設けて、きものファンや、観光客への対応もしています。まさにわくわく館の名にふさわしく、着物のわくわくする楽しさを提供しています。ここ数年はコロナウイルスの感染拡大の影響で観光客が激減し、訪れる人も減りましたが、間もなく、少しずつお客様が戻り、かつての賑わいを取り戻すに違いありません。
社長の英助さんはもっぱら織を担当し、弟で常務の勝廣さんが染担当と、兄弟で仲良く得意分野を分担してきました。
山形の名産のさくらんぼの枝を染めの原料に取り入れて研究をしたとき、色味が薄く、濃い色が出せないと悩んでいた勝廣さんに、英助さんは「淡い色合いも織のきものには生かせるから、ぜひその色を使いたい」と知恵を出し、さくらんぼ染の着物が誕生するなど、家族が力を合わせてさまざまな作品を生み出してきました。
また、黄金の繭で織られた「月光着尺」も看板商品で、突然異変で偶然にみつかる黄金の繭を交配を重ねて生み出した繭で織られています。染めた色ではなく繭そのものの色の作品は、糸の美しさもさることながら、大変軽く、肌触りが良いものが特徴で単衣の着物として人気です。
最近では、機音を聞いて育った英助さんの息子で専務の正文さんが物づくりに参画し、さらに新しいチャレンジをしています。
正文さんが中心となって制作をし、人気なのは「みちのく板締め絞り」です。一度織り上げた八寸帯や着尺を一定のルールで折り、板でキツく締めてさらに染め上げるというもので素朴な魅力にあふれています。
訪れるたびに新しい作品に出会える齋英織物の次のチャレンジも楽しみです。