Ruruto

特集

無限のコーディネートを楽しむ
春は徹底的に帯研究

桝屋髙尾のもの作り
美しくないから
飽きるんですよ 人は

青磁鼠せいじねずの江戸小紋万筋は茶人も好むつづまやかな着物で
一枚は欲しい年齢を選ばない着物です。

帯:針𦁤金「菱詰松葉文」 桝屋髙尾

2024西陣織大会(社)日本図案家協会会長賞受賞作品
図案家島村一範さんのデザインを、より現代らしく太鼓、腹に柄を置き直し創作した帯で、経浮きの多い組織により、経糸にほどこした絣による色の切り替えをより美しく見ることができます。また、細かな砂子表現を用いることにより上品な𦁤金糸の煌めきが映える、飽きのこない帯となりました。
着物
チェンジ

着物:加賀調訪問着

春色の優しい訪問着に針𦁤金の帯が寄り添うように映えて、どんなお席にもさりげなく溶け込むコーディネートになりました。針𦁤金の生地で作ったシンプルで美しいバッグは収納力もあって使い勝手が抜群です。

美しく個性的なだけでなく、締め心地も抜群の帯なら一番のお気に入りになりそうです。
ここ一番の帯を持っているというコーディネートフリーな安心感。

着物
チェンジ

着物:加賀友禅付下げ
「七宝」奥田雅子 作

『るると』の読者の皆さまには裏表紙や2024年秋号の「加賀友禅新潮流」などでおなじみの、奥田雅子さんの作品で今号の表紙を飾っています。

桝屋髙尾の帯の魅力
桝屋髙尾 社長 髙尾朱子氏
特別インタビュー

今回、撮影場所を提供してくださった桝屋髙尾さん。2020年に創業90周年を迎え、創業百年へ向かっていた2024年3月、先代髙尾弘さんが天に召されました。徳川美術館から𦁤金綴錦の復元を依頼され、幻とされた布の復元に果敢に挑戦し、見事に成功をしたエネルギッシュで研究熱心な方でした。
「一本の糸に、一片の裂に込められた先人の想いを想像するとき、新たな驚きと感動を呼び覚まされ、創作への情熱を駆り立てられる」という弘さんの魂を受け継いだ現社長の朱子さんもまた、新たな挑戦を続けています。

  • —今日はありがとうございます。20年ぶりのインタビューです(笑)。朱子さんはたしか長女じゃないんですね?

    朱子 そうなんです。三姉妹。幼い頃から「会社を継げ」と言われたこともなくて、普通に学校を卒業して一般企業で働いていて、身体を壊したことをきっかけに会社に入ったんですけど「跡継ぎです」っていう顔して働くのも嫌だったので、いろいろな業務を全部経験させてもらったんです。3年間やってみて「継ぎたい」という気持ちになったらそのときに考えようって…。

  • —そして、3年後、継ぎたいという気持ちになったキッカケのような出来事があったんですか?

    朱子 ひと言で言うと、うちの帯が締めやすかったんですよ(笑)。実は、その3年間の間に着付け教室へ通って自分で着物を着られるようになったんですが、練習用の帯でお稽古して、いざ、父が開発した𦁤金の帯を締めたら締め心地が違っていたんです。締めやすいだけやなくて、着ていて楽やし、お太鼓の格好も良いし、もう、この帯締めていたらどこへ行っても大丈夫やな~って。

  • —すごいですね、それは最強ですね。

    朱子 そう思わはる?うれしいわ。父が復元して開発した…、父は開発者やけど未着用やから、自分が着用者としてこの帯と関わっていきながら跡を継いでいったらって、明確にやるべき事ややりたいことが描けたんです。

  • —桝屋髙尾さんというと𦁤金。キラキラしたフォーマルの帯をイメージしますが…。

    朱子 それで、もう10年にはなりますが、材料のバリエーションを広げることで少しカジュアルなものも作ってみようと…。

  • —何か理由があったんですか?

    朱子 (笑)入社してすぐいろいろな業務をして、販売にも行ったんやけど、仕事をして割とすぐの頃、お客さんに「キラキラした帯、キライやねん」って言われて、その頃の私は何も言えなくて…。

  • —お客さま、ものすごい直球ですね。

    朱子 それで、光らへん帯であったり、少し違ったものも桝屋髙尾のラインナップにあったらええんちゃうかな?と思ったんです。それから、箔をつや消しタイプにしたり、漆の箔を使ったりして、カジュアルをドレスアップして着るっていうポジションを作れるようになったんです。

  • —直球のお客さまのおかげですね~(笑)

    朱子 漆をやって良かったことは、「黒」なんです。黒い帯を作れるようになったこと。うちは先代の父の時代から糸から作るんですが、芯に真綿を使って箔を巻いて作るのが𦁤金で、黒だと思っていた帯が茶色に見えたりすることがたびたびあって、それで、試行錯誤の末に、真っ黒の芯に真っ黒の漆箔を巻くことで本当の黒ができて、そうなると、朱色の芯に黒を巻くと漆風の、グッと趣味性の高い帯ができて…。

  • —試行錯誤は桝屋髙尾のお家芸ですね。

    朱子 そうですね(笑)そうそう、うちでは今「締め心地体験」っていうのもやっていまして、締めていただいて良さを知っていただくっていうのも大事かなと。これからもいろいろなチャレンジをしていきたいと思っています。

  • —着る立場と作る立場のハイブリッドですね。これからの作品も楽しみにしています。ありがとうございました。