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『るると』取材班は、スコープ・ココの物づくりにおける懐刀(ふところがたな)で、どんな少量の糸染めにも応じてくれるという染屋さんを訪ねました。 北野天満宮の近くの「寺井染工」です。
「糸を預かって、ご注文どおりの色に染め上げるのがうちの仕事です」と社長の寺井一雄さん。得意先の感性にドンピシャの色を出すのがポイントだとおっしゃいます。好みはもちろんのこと、得意先の光源がどんなものなのかまで頭に入っているというから驚きです。
「スコープ・ココさんは、色見本が2万色もあるのに、その隙間の色を欲しがるんですよ」と笑います。色は赤、青、黄色の三原色。その周辺の色も含めて使用する染料は50種類程度。そこから寺井さんの勘でその時染める糸の分量だけを、料理でもしているかのように目分量でサッサッとお玉に入れていきます。
寸胴から湯気が出ているので湯温を尋ねると90度だそうで、そこへ糸をそっと沈めます。取り出して絞り、見本の糸と見比べては、少し染料を足してまた沈め……と、2~3回繰り返すと見本とほぼ同じ色になりました。
「青はいいですがグレーは難しいですね。糸染めは足し算。あとはもう経験と勘です」という寺井さん。糸の種類が変わると染まり具合も変わるそうで、スコープ・ココの仕事は糸も多種多様な上に、とりわけこだわりが強いとのこと。そんな難しい注文に長年応え続けている職人の誇りを感じる仕事ぶりを見せていただきました。
今出川通りに面した入り口には暖簾が揺れていました。
見本を手に取ってじっと見つめます。
迷いなく染料をオタマにとります。
染料の色だけを見ているととても青に染まるとは思えません。
糸を静かに沈めていきます。
何度か、浸けたり上げたりして様子を見ます。
数分でドンピシャの色になりました。