特集
中国、インド、フランス、イタリアなど、世界各地の芸術品、工芸品、建築物を意匠に求め、技術もまた学ぶという広い視野で創作活動を続ける紫峯の作品の数々に注目が集まっています。写真のメインコーディネートは世界の染織をテーマにした紫峯の「絹大陸」というブランドから。その中でも青の都、サマルカンドのシリーズは、シルクロードの魅惑の繍が魅力です。絹大陸シリーズには他に「ナポレオン」「インド」「慶長」などがあり、多彩な技法を取り入れた着物と帯が人気です。
着物と帯の刺繍は、主張しすぎないのに奥行きを感じさせてくれる品の良さで、和の空間にも洋の空間にも違和感なく溶け込めるドレスのような軽快な装いが実現しました。
トータルコーディネートで制作された着物と帯ですが、着回しで着物ライフは一層楽しくなります。春の風に溶け込む軽やかで躍動感あふれるおしゃれで、この春はどこへ出かけましょうか。
着物:南風原花織
着物:小紋 飛び柄(雪輪)
更紗や唐草文様は、日本のみならずヨーロッパやアジアにも数多く見られ、布だけでなく建築物や工芸品にもたくさん用いられています。
更紗の語源はジャワ語のセラート、ポルトガル語のサラカ、インドの地名スラートなど諸説ありますが、ハッキリは分かっていません。日本には室町時代に木綿の染色布として渡り、草花や鳥獣などの異国風の図柄は珍重されました。これらの文様を模した堺更紗、鍋島更紗、江戸更紗など独自の和更紗が生まれました。
一方の唐草文様は、蔓が流線型に絡み合い、葉や花や実をあしらって文様化したもので、例えば葡萄の実ならば「葡萄唐草」などと呼ばれます。唐草文様は奈良時代に中国から渡ったとされ、『宇津保物語』の一説には「唐草 鳥など彫り透かし……」などとあることから、平安時代にはすでに唐草と呼ばれていたことが分かります。江戸時代にはその生命力の強さや蔓がぐんぐんと伸びる様から延命長寿、子孫繁栄の吉祥文様として小袖などに用いられるようになりました。
着物:小紋 飛び柄(貝合せ)
「織を楽しむこころ」から「織楽浅野」と名付けた作り手は、素材と織の持つ美しさを、侘び寂びや、陰翳のうつろいといった日本の美の本質を追求することで表現しています。時を超える美しさを求め続けることで生まれる抜群の存在感を放ちます。
この帯は、二重織の膨らし組織によって空気を含んだふっくらとした地風を生み出す技法で丁寧に織り上げられています。