2017/06/01
今回、制作現場を見せてくださったのは、福岡県筑紫野市内で、6代続く西村織物。一番古い博多織の織屋さんです。
気が抜けない佐賀錦帯の手織り作業。経糸は、0.5ミリもの細さに切り出した金箔の糸。
広い敷地の自社工場を持ち、デザイン、図案制作から、糸づくり、機こしらえ、染め、織り、販売までの全ての工程を一貫製造しています。若手の社員や職人さんと共に活躍しているのは、ベテランの伝統工芸士さんたち。手機を駆使して、繊細な佐賀錦帯を織り上げる井上久人さんも、そのお一人です。厳しい博多織職人の世界で、各種賞を受けるほど、その技を磨いてきました。その技は、博多織の学校を卒業した若手をはじめ、社内の職人たちに受け継がれています。
熟練の技でファンの多い伝統工芸士の井上久人さん。手機でしか出せない味わいは、独自の手加減から生み出される。井上さんの手による手織り佐賀錦袋帯。緻密な地紋に、立体感ある雲文様がみごと。
西村織物のこだわりで厳選された生糸を索材として織り上げられる帯。中でも人気のシリーズのうちの―つが、同じ北九州の織、久留米絣の人間国宝 森山虎雄氏とのコラボから生まれた『藍浪漫』シリーズです。森山氏の本藍染めによる、藍色の糸を織り出したジャパンブルーの色味が、何ともいえぬ深みを醸し出しています。
こうした個性ある製品と不動の人気を有する定番品、いずれも大切にされています。役者やはなし家といったきもののプロにも愛用者が多いという西村織物の博多織。それぞれに、今の時代に合わせた明るくモダンな色目も積極的に織り出されていくこれからの製品にも、ますますファンが増えそうです。締めたい具合で、決めたい形に決まる帯姿のために、博多織の帯は欠かせない1本となるかもしれません。