特集
商品協力/愛染倉 小川屋 鳳裳苑おぐり 紀久屋 望幸
撮影/タカヤコーポレーション
取材写真/秋本きりん
着付け/羽尻千浩
ヘアメイク/添田麻莉
モデル/JKS専属ドリームエンジェルRIN YUKI
撮影協力/THE HOTEL HIGASHIYAMA by Kyoto Tokyu Hotel
〒605-0033京都市東山区三条通白川橋東入三丁目棗町175-2
Tel075-533-6109 Fax 075-533-6122
www.tokyuhotels.co.jp/higashiyama-h/
二十歳の記念にまとう振袖には、
人生が豊かで幸せに満ちあふれたものになるようにとの祈りと願いが込められた、
吉祥文様がたくさん描かれています。
意味を知ってまとうことで、
装いの楽しさや感謝の気持ちが深まることでしょう。
四季の変化に富んだ美しい国、日本では、さまざまな植物が身近にあることから歌に詠われ、文様に描かれてきました。 その美しさ、可憐さ、生命力を愛でる心が日本人の美意識を刺激し、多種多様な意匠が生まれました。 誰もがよく知る「松竹梅」をはじめとして、数多くの植物文様の中から、振袖に描かれる特に縁起の良い代表的なものを紹介します。
捻梅(ねじうめ)
捻梅のように図案化され、輪郭の中に細かな吉祥紋を描くのも京友禅などの技法でよく用いられます。
松
常緑樹の松は、いつの季節も緑色を保っている凛とした強さや、千年の樹齢を誇ることから長寿の象徴として吉祥の木の最高峰とされています。光琳松、老松、唐松、若松、笠松、磯馴松など意匠もさまざまで、格調高い文様として留袖や振袖など第一礼装などに多く登場し、お召しになる方の品格を感じさせてくれます。
竹
松と同様に常緑で、しなやかで強く、折れない竹は高潔さや節度の象徴です。神の依代として祭祀にも用いられるなど尊重されてきました。心が折れやすい現代社会では、多くの人の心の支えになりそうな意匠です。
梅
中国から天平時代に伝来し、万葉集には120首も詠まれ、襲色目にも用いられるなど好まれてきました。寒い冬に他の花に先駆けて清楚な美しい花を咲かせることから、忍耐力、生命力の吉祥文様として着物や帯だけでなく多くの工芸品の名品が生まれています。特にたくさんの滋養豊かな実をつけることから子孫繁栄の象徴ともされていますので、振袖にふさわしい吉祥文様です。 学問の神様となった菅原道真公の天満宮の社紋としても馴染みが深く、受験などのお守りにも。
橘
家紋にもよく用いられる橋は、ミカンの仲間で、ひな人形の飾りにもあるので、「ああ、あれ~」と思い出す方もいらっしゃるでしょう。最も有名なのは京都御所紫宸殿の右近の橋です。文様としてはかなりの具象化、図案化されているのでミカンの仲間には見えないかもしれません。 『日本書紀』には「常世からもたらされたもの』と書かれており、松と同様に常緑樹。長寿や繁栄を表す文様として振袖にはふさわしい吉祥文様です。
桜
桜の「さ」は「早苗」「早乙女」の「さ」。「くら」は「神楽」「神蔵」の「くら」。私たちの遠い祖先は、神様のよりどころを「さくら」と呼びました。五穀豊穣を表す縁起の良い桜が文様として描かれるようになったのは平安時代。枝葉の付いた写実的な描かれ方から、花だけ、花びらだけ…とさまざまな文様として描かれています。長い冬を耐え抜いて一気に咲き誇る姿から幸先の良さをイメージさせる桜の文様は、大人の人生のスタートにお召しになる振袖にはぴったりです。
椿
椿は橘と同様に日本原産の花で、春の到来を告げる聖なる木として好まれてきました。「永遠の美」を表しますので、お嬢さまの出発にはふさわしい文様です。常緑樹ですので、松と同様に長寿や繁栄の願いも込められています。
桐
成長が早いことから、女子が誕生すると庭に桐の木を植え、嫁入りのたんすにしていた時代もありました。中国の神話では聖なる鳥である鳳凰が舞い降りる木とされています。古来から、願いがかなうとされる縁起の良い木で、菊とともに皇室の紋にも用いられている格調の高い文様です。花房を伸ばして変化を付けた「踊り桐」は特に華やかで振袖や花嫁衣裳に描かれます。立涌の中に図案化した桐を描く図案は、直垂や袿などに描かれてきました。
楓(紅葉)
楓が紅葉するともみじと呼ばれます。特に青葉を 描いたものは青楓と呼ばれ、桜と共に描かれたものは桜楓文様と呼ばれます。
楓は長寿を意味する吉祥文様で、晴れ着にもふさわしい文様としてよく用いられます。新緑から紅葉の季節まで美しく姿を変えながら常に人々の目を喜ばせ心を潤してくれることから、人気や人望の高さを表し、上手に世の中を渡っていけますようにという願いが込められています。
花の丸
さまざまな草花を図案化して丸く描いたもので、刺繍でもよく用いられます。それぞれの花の縁起ももちろんのこと、優雅で華やかな古典文様ですので、お嬢さまの晴れ着にも最適。その他に「花籠」、「花筏」、「花車」、「花熨斗」、「花扇」など、多種多様な花を華麗に文様化したものはいつの時代も人気です。
薔薇(ばら)
西洋のイメージが強い薔薇ですが、意外なことに『古今集』の中で「さうび」と詠まれています。しかし、文様として描かれるようになったのは最近になってからで、いうまでもなく「愛」と「美」の象徴です。
参考までに代表して紀貫之の歌をご紹介しておきます。
「我はけさ うひにぞ見つる 花の色を あだなるものと いふべかりけり」
あだなるもの=「色っぽいもの」と「はかないもの」の両方の意味を持ちます。