Ruruto

特集

この春も、これからもずっと私の宝物
極上の染で 心躍らせて

商品協力/近江屋 丹羽幸 高田勝 光映工芸 栗山工房 久保田一竹
撮影/タカヤコーポレーション
取材写真/中根禎裕
着付け・ヘアメイク/添田麻莉
モデル/CHIZURU(JKS専属ドリームエンジェル) 四位笙子 糸瀬星奈
撮影協力/京都市国際交流会館

色や文様で華やぐ気持ち、心躍る気持ち
そんな気持ちで出かけたい日があります。
大人の女性に欠かせない「輝き」に、頼りになる着物で
記念日も思い出も洗練されたものに・・・。

金彩友禅で優雅に輝く

きれいな着物に心惹かれる春。
美しく輝く「光のオーケストラ」と呼ばれる
金彩友禅の装いが、春の暖かい陽射しを受けて一層きらめく季節です。

着物:教会
帯:ノートルダム
光映工芸

「聖なる宝石箱」と讃えられるサント・シャペル教会をモチーフ に品の良さと豪華さを表現しました。ドレスに負けない華やかさと品格をたずさえて。帯はノートルダム寺院の美しさを華麗に、 かつ大胆に袋帯に表現しました。
着物:斜市松 ステンドグラス
帯:ステンドグラス
光映工芸

ブラジリアのドン・ボスコ聖堂からインスピレーションを受け、その美しいステンドグラスを斜市松に配したまばゆいばかりの煌めきが装う人を一層輝かせます。

咲き誇る金彩の花々の輝きが、
大人の女性としてのスタートを鮮やかに彩ります。

着物:ジャスミン
帯:ジャスミン
光映工芸

可憐な花と、誰からも愛される香りを兼ね備えたジャスミンは「神からの贈り物」と呼ばれます。 花言葉の「愛らしさ」をデザインしました。
着物:なんじゃもんじゃ
帯:花うさぎ
光映工芸

「ヒトツバタゴ」の別名「なんじゃもんじゃ」は、民俗学的には占いや神事に使われていたとされています。花とうさぎの組み合わせは名物裂にも用いられているモチーフで、花の咲いた木の下で後ろを振り向き、耳を立てているうさぎの姿をかわいらしく表現しました。
着物:サマルカンド
帯:乱菊の集い
光映工芸

ウズベキスタンにあるサマルカンドをモチーフに縦一列に金彩を施した涼やかな表現。 帯は乱菊を着姿が良くなるように配し、帯芯に加工を施しています。
コート:御召紋紗コート
光映工芸

御召の生地と紋紗の生地を合わせた織物で、生地厚の部分から透かしへの境目が非常に難しい織物で、品の良い金彩を施すことでシックな中にもオシャレ心を表現しています。オールシーズンお召しいただけます。

光のオーケストラ
工房探訪 金彩友禅 京都 光映工芸

  • 布の芸術、光のオーケストラは無限の可能性を秘めながら今なお進化を続けています。 立ち止まらないからこそ、京友禅のあしらいに過ぎなかった技術は京友禅でありながら京友禅を超えて世界中から評価を得ています。

    社長の和田全央(まさお)さん

祖父から父へ、そして

『るると』編集部が取材に行ったのは昨年の秋。京都の紅葉が少しずつピークへ向かい、旅行支援の追い風もあって観光客の姿も多くなってきた頃でした。
『るると』編集部メンバーは多忙を極める光映工芸の和田全央社長を訪ねました。
金彩自体は、京友禅のあしらい(加飾)として古くから存在していました。和田社長お祖父さんは一流の金彩職人で、仕事の冴えは超一級、独自の味わいを持っていたそうです。お父さんの光正さんが三歳の時に肺結核で亡くなられたので、直接、金彩の技術が受け継がれたわけではありませんでしたが、光正さんは叔母の薦めもあって、内定を蹴って金彩職人の道に入ったといいます。
その後、光正さんは22歳で独立。「たとえどんなに道は険しくても、一歩一歩、正しく前進せよ。必ず山頂にたどり着く。その一歩一歩がたとえようもなく尊い自己訓練である」という決意をしました。当時、京都の職人さんの世界では金彩職人の地位はあまり高くなかったのです。「あしらい仕事」とか「染難隠し」と呼ばれ、誰にでもできる簡単な仕事だと思われ、冷遇されていました。
光正さんは、江戸時代の小袖などに金彩が施されていることから、必ずできると信じ、昭和46年に金彩の作品を発表するまでの約15年間、寝食を忘れて金彩技術の改良、改革、開発に取り組みました。

金彩職人から金彩友禅作家へ

金彩とは、要するに金属ですから、本来固いものを布に貼り付けるわけです。その技術は考えただけでもかなり難易度が高いことがわかります。後染めや、着用、クリーニングをしても金彩が剥がれ落ちることのない糊の開発に到り、長年の愛着に堪える金彩友禅を確立していきました。
当時は、十色ほどしかなかった金彩箔でしたが、一色、一色増やし、ついに百五十を超える微妙な色合いを実現していきました。多くのご縁をいただきながら、京都大学の樹脂の先生に教えを請うたこともありました。そうして止まることなく努力を続け、一歩ずつ技術の革新を続けてきたそうです。「儲けたいと思うこともあったけど、今は、それ以上に自分の仕事を後世に遺したいと思う」と、やがてその心境は微妙に変化してきたそうです。
その仕事ぶりや苦労を見て育った全央社長がしっかりとその思いを受け止め技術を受け継いで、さらに研究開発の努力を続けています。
「グラデーション・・・、つまりぼかしというのは、染の職人にしかできない世界でした。金彩職人はそこへほんの少し金を加えて仕上げをする、そんなあしらい仕事だった金彩ですが、微妙なぼかしや色合い、そして立体感に到るまで、友禅染にできることはすべて金彩でできるようになりました」と全央社長。そして、百五十を誇った金彩の色も、その時代に求められる色を新しい技術で次々と実現しているのです。

  • ボトルの中にはさまざまな色の金箔や材料が大切にしまわれています。職人さんたちはここから思い描く色に近い素材を自分で選びます。

  • 約2グラムほどの金をひたすらたたいて畳一畳程度の大きさまで伸ばすと、1万分の1ミリの薄さの金箔となります。

  • このスケールが2フロア。若い職人さんたちが働いています。かなりの領域まで任せてもらえる自由さと責任の重さが、ピリッとした心地よい緊張感を漂わせるとともに、若手の成長の助けになっています。

  • 筒の中に色の違う金箔が入っています。

  • 渋柿の型とシルクスクリーンとの両方を使っていますが、だんだん柿渋は減ってきました。これが企業秘密の糊置きです。

  • 筒から金箔を落として筆でぼかすというデリケートな仕事。風が吹くのは絶対厳禁なので気温や湿度との闘いでもあります。

  • 筒の底は網目になっていて金箔の粒子サイズが均等になるように特殊な糊の上に落とします。

樹脂が違う

図案にも色を付けています。

温暖化の影響もあり、単衣や薄物も需要が増えてきましたが、光映工芸でも、昨今人気があるのが紗と丸巻き(小紋)だといいます。レースのように透けている素材に金彩友禅を施した作品は、かすかな光の加減で品の良い輝きを放ちます。
「表面の色が角度によって少しだけ変わるのがいいでしょう?」と、丁寧に説明してくださいます。確かに玉虫色のように、角度によって青く見えたりピンク色に見えたりと、さまざまな表情を見せてくれました。
つまんでもひっかいても剝がれない光映工芸の金彩友禅の高度な技術は、ついにアーティスティックスイミングの水着にも採用されるまでになりました。つまり水の中に入れても、激しい動きをしても金彩友禅は剥がれ落ちることはないのです。
「樹脂が違うんです」とキッパリ言い切る全央社長の表情は自信に満ちあふれています。ポイントは、布と金属をなじませ、それぞれの長所を最大限に引き出す糊の開発、そしてその開発した素材を使いこなす技術が、他にはない本当の金彩友禅を作り上げる技術なのです。
世界中どこへ行っても、どんなドレスにも負けない着物ですが、最近ではハンドバッグなどの小物からドレスの生地にも使われるようになり世界中で高い評価を受けています。

少し飛ばしながらですが、型一枚ごとに、金彩友禅を施し、徐々に全貌が明らかになっていく工程が分かります。

図案の色の数だけ型が必要になります。多いものだと数十枚に。