Ruruto

装いは人柄 vol.20

2017/03/01

装いは人柄

日本女性の引き出し

日本には二十四もの美しい季節があります。四季折々の移ろいの中にさらに、空や大地の営みや、気配や気分が変わるたくさんの季節を二十四節気と呼び、多くの年中行事や風習がそれにしたがって営まれてきました。
美しい国に生まれたことを悦び、先人たちが、季節に寄り添い、自然の中で生きてきたステキな行事や風習をきものの世界をとおしてお伝えしていきます。

トンチや洒落も日本のおしゃれの楽しさ

訳の分からない難しい和歌でも、例えば歌舞伎でも、文豪でも、とりわけ落語や地口など……。何かを何かになぞらえたり、別の言葉に言い換えたりと「表現」を工夫して楽しむことができるのが日本の言葉の難しいところではないでしょうか。じつはこれ、着物の世界でもよくあることなのです。

戦後、生活の洋風化に伴い、着物離れが一気に加速してフォーマル以外は洋服で過ごす人が増えてきました。しかしここ近年、お芝居を観に行ったり、お買い物や旅行にも着物を着用する人がまた徐々に増えてきました。フォーマルは周囲や相手への思いやりやマナーを重んじますので、トンチの利いた着こなしというのは見かけられませんが、普段着物なら楽しみ方もまた多岐にわたってきます。若く見られたい、美しく見られたい、知的に見られたい、色っぽく見られたい……、着物は女性の夢をかなえてくれる魔法のお召し物かもしれません。

さて、中でも小紋の色柄やおしゃれは格別で、クスクス笑ってしまうのみならず、吹き出してしまったり爆笑してしまいそうなものまで。帯や小物との取り合わせでさらに意味を持たせたりと、その自由でのびやかな表現や着こなしを知ってしまうと、着物がさらに面白くなってきます。特集でもご紹介をした、山東京伝の「小紋雅話」という本は小紋の楽しさを広げてくれる遊び心に満ちあふれていて、江戸時代の庶民の茶目っ気や洒落っ気には思わず圧倒されてしまいます。

例えば、尾形光琳の描いた「紅白梅図屏風」から生まれた「光琳梅」という模様が着物にもよく描かれます。平らな花の輪郭に上弦の月のようなしべがあるあまりにも有名なあの模様、山東京伝の手に掛かると、この「面の皮梅」となり、よーくみると梅の花がお多福になってこちらを向いて笑っているという、なんとも遊び心に満ちた小紋。唇が並んだ「口々小紋」はキスシーンの唇だけが描かれていてなんともおかしい。例に挙げればきりがないほど、楽しい文様がいっぱいです。中でも「本田鶴」に至ってはもう笑い転げるしかありません。町人の持っていたちょんまげ「本田髷」を真上から見た様子を鶴になぞらえたもの。こうした江戸時代の遊び心としゃれ心を、自分なりの着こなしやセンスで、外出先やこれから見るお芝居、自分の趣味などになぞらえて、いろいろ工夫すると、洋服では味合うことのできない、日本人ならではの、おしゃれの本当の楽しさに近づけるかもしれません。