Ruruto

装いは人柄 vol.26

2018/09/01

装いは人柄

日本女性の引き出し

日本には二十四もの美しい季節があります。。四季折々の移ろいの中にさらに、空や大地の営みや、気配や気分が変わるたくさんの季節を二十四節気と呼び、多くの年中行事や風習がそれにしたがって営まれてきました。
美しい国に生まれたことを悦び、先人たちが、季節に寄り添い、自然の中で生きてきたステキな行事や風習をきものの世界をとおしてお伝えしていきます。

一生物を愛し、使い続けるという贅沢

たくさんの衣類や履物を持っていることが「豊かさ」の象徴だった時代は過ぎて、毎日同じ服を着るのがオシャレな時代と言われるようになりました。アップルの創始者スティーブ・ジョブズ氏の、黒いハイネックのシャツにジーンズ姿は印象に残っている方も多いのではないでしょうか。日本もどんどん豊かになって、食べるものがいくらでもあるとか、着るものもたくさん持っているなどということよりも、本当に自分が愛せるものを持つことや、それを一生大切に使い続けることが、なんだかとても「すてき」な時代になりました。

確かに、たくさん持っていることよりも、一生物を選び抜く目とセンスがあるほうがカッコイイような気がします。そう思うと、汚れに強く、着心地が良く、保温性に優れた大島紬は、ぜひとも1~2枚、そう、泥と、藍がいいか白がいいか……、屋久杉なんかもすてきです。そうして楽しみながら厳選して、本当に自分が愛せるものを選びたいものです。愛着のある大島紬は、帯などのコーディネートを替えて楽しんだりしつつ、今年も来年も再来年も……と、長く愛用しているうちにどんどん似合うようになって、新しい発見もあったりして、とても心豊かな日々を過ごすことができそうです。

幾度となく染料をくぐり、泥田に沈められた糸は、しなやかに、強く美しく、そして柔らかく私たちの身を包んでくれます。静電気が起きにくく、汚れや雨にも強いので、まさに一生の愛着に堪える「私の一番のお気に入り」になってくれそう。

「紬」には、その紬が誕生した土地の気候、風土、風俗、気質、歴史……、などが大きく影響します。奄美大島の大自然の中で生まれた大島紬には、絣の正確さや織の緻密さという、世界一といわれるほど繊細な部分と、大空や海や大地をまるごと閉じ込めたような大きな自然のエネルギーの両方を感じることができます。その絶妙なバランスと、神秘の島の目に見えないパワーがきものファンを魅了し続ける理由かもしれません。

秋風が爽やかに裾を揺らす頃、大島紬をエレガントに着こなすことができたら、女性としての格がひとつ上がったような気持ちになれるかも……。