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2025/06/27

男性のための着物入門:初めての和装ガイド

「着物」と聞くと、特別な日の女性の装いを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年、男性の間でも着物への関心が高まっています。格式高い印象だけでなく、通常の装いとは異なる粋さや、日本の伝統文化に触れる喜びを感じられるのが着物の魅力です。

とはいえ、「難しそう」「何から始めればいいかわからない」と感じる方もいるでしょう。そこで本日は、着物に興味を持ち始めた男性に向けて、初めての和装を安心して楽しむための入門ガイドをお届けします。着物の種類から基本的な着方、シーンに合わせた選び方、そして着こなしのポイントまで、丁寧に解説していきます。この記事を読めば、あなたもきっと、着物のある心豊かな生活をスタートできるはずです。

1.まずは知っておこう。男性の着物の種類

男性の着物には、用途や格式によっていくつかの種類があります。まずはそれぞれの特徴を知ることから始めましょう。

【Point:男性の着物は、主に「普段着」と「礼装」に分けられる】

大きく分けると、普段使いできるカジュアルな着物と、結婚式やパーティーなどフォーマルな場で着用する礼装があります。

1.1 普段着の着物:気軽に楽しむ、男の粋

普段着として着用する着物には、以下のような種類があります。

 ◯紬(つむぎ): 蚕の繭から紡いだ糸で織られた、丈夫で普段使いしやすい着物です。生地に独特の節(ふし)があり、素朴で味わい深い風合いが魅力。街着や趣味の集まりなど、カジュアルなシーンに最適です。

◯お召し:先染めの絹糸を強く撚(よ)って織られた、しなやかで光沢のある絹織物です。紬よりも滑らかで上品な印象を与え、少し改まったお出かけや観劇などにも適しています。独特のシボ(細かい凹凸)が特徴で、着崩れしにくいのも魅力です。

 ◯木綿(もめん): 綿糸で織られた着物で、肌触りが良く、吸湿性に優れています。暑い時期のちょっとしたお出かけなど、カジュアルなシーンにぴったりです。

 ◯浴衣(ゆかた): 夏の普段着。花火大会やお祭りなどで主に着用されています。最近では、おしゃれなデザインの浴衣も増えています。

1.2 礼装の着物:格式を重んじる、大人の装い

フォーマルな場で着用する着物には、以下のような種類があります。

 ◯黒紋付羽織袴(くろもんつきはおりはかま): 最も格式の高い、男性の礼装です。結婚式や葬儀など、慶弔両方の場で着用されます。五つ紋と呼ばれる紋が背中と両袖、両胸に入ります。 一般的には、着物・羽織は羽二重という生糸を用いて織られた滑らかで光沢のある生地で作られます。袴は仙台平など、縦縞の物を合わせるのが一般的です。

 ◯色紋付羽織袴(いろもんつきはおりはかま): 黒紋付に次ぐ格式の礼装です。結婚式や披露宴などで、新郎新婦の親族や仲人が着用することが多いです。三つ紋や一つ紋が入ります。

 ◯一つ紋付(ひとつもんつき): 略礼装として、格式あるパーティーや茶会などで着用されます。背中に一つ紋が入ります。

2.これだけは揃えたい。着物を着るための基本アイテム

着物を着るためには、着物本体だけでなく、いくつかの小物が必要です。初めて揃える際に必要な基本的なアイテムを見ていきましょう。

【Point:着物、帯、襦袢、履物、小物類が基本セット】

2.1 着物:まずは一枚、お気に入りの普段着から

まずは、普段使いできるお気に入りの着物を見つけましょう。紬やお召しなど、自分のライフスタイルや好みに合った生地や色柄を選ぶのがおすすめです。自分に合った色柄がわからない時は、呉服屋さんに尋ねるとアドバイスしてくれます。

2.2 帯:着物の印象を左右する、重要なアイテム

男性の帯は、女性の帯に比べて幅が狭く、結び方もシンプルです。主に以下の種類があります。

 ◯角帯(かくおび): 最も一般的な男性用の帯で、普段着から礼装まで幅広く使えます。貝の口や浪人結び(片ばさみ)など、いくつかの結び方があります。

 ◯兵児帯(へこおび): 柔らかい素材でできた帯で、浴衣やカジュアルな着物に合わせます。結び方も簡単で、リラックスした雰囲気を演出できます。

2.3 襦袢(じゅばん):着物を汚れから守る、下着の役割

襦袢は、着物の下に着用する長着です。汗や皮脂から着物を守り、着心地を良くしたり着物の着崩れを防止する役割があります。

2.4羽織(はおり): 着物の上に羽織る上着

防寒の役割はもちろん、着こなしのアクセントとしても重要なアイテムです。素材は正絹だけでなく化繊などもありますが、正絹の着物の場合には、やはり正絹の羽織を合わせるのがおすすめです。お召や羽二重など、着物との素材感や色柄の調和を考えて選びましょう。紋を入れることで、略礼装としても着用できます。

2.5 履物:足元にも気を配ってこそ、粋

男性の着物には、草履や雪駄を合わせるのが基本です。

 ◯草履(ぞうり): フォーマルな場から普段使いまで幅広く使える履物です。素材やデザインによって印象が変わります。底に厚みがあるため、歩きやすく足への負担が少ない傾向があります。

 ◯雪駄(せった):一般的に底が薄く平らな履物で、普段着に合わせることが多いです。裏に金具が付いているものもあります。底が薄いため、地面の感触が伝わりやすく、かかとの金具が「チャラチャラ」と特徴的な音を出し、粋な印象を与えます。

2.6 小物類:着姿を整え、個性を演出

その他にも、着物を着る際に必要となる小物があります。

 ◯腰紐(こしひも): 着物や襦袢をはだけないように固定するために使います。

 ◯伊達締め(だてじめ): 着崩れを防ぎ、着物のラインを美しく保つために使います。

 ◯足袋(たび): 白足袋はフォーマルな場に、色足袋や柄足袋はカジュアルな装いに合わせます。

3.いざ、着物を着てみよう。初めての着付けステップ

必要なものが揃ったら、いよいよ着付けに挑戦です。最初は難しく感じるかもしれませんが、男性の場合基本を覚えれば意外と簡単に着られるようになります。

【Point:動画や着付け教室を活用するのがおすすめ】

ここでは基本的な手順を解説しますが、実際に着る際は動画を見たり、着付け教室に参加したりするのがおすすめです。

3.1長襦袢を着る

 肌着の上から羽織り、紐で結びます。衿元が首に沿うように合わせ、左右の身頃を重ねて腰紐で固定します。長襦袢を着る前に、足袋は履いておくのがおすすめです。

3.2 着物を着る

まず着物を羽織り、襟元が首の後ろに沿うように合わせ、右側の身頃を左脇に重ね、次に左側の身頃を右脇に重ねます。腰紐を腰骨の上あたりでしっかりと結び着物がはだけないよう固定します。

3.3 帯を結ぶ

・角帯の場合、手先を半分に折り胴に二巻きします。端を適当な長さに折り返し、結びたい形(貝の口など)にしっかりと結びます。

 ・兵児帯の場合は、胴に巻き付け、最後にリボン結びなどお好みの結び方をします。

3.4 羽織と履き物

羽織を着物の上から羽織り、羽織紐を結びます。そして草履または雪駄を履いたら完成です。

4.シーンに合わせて楽しむ。着物の選び方と着こなし

着物は、着ていく場所や目的に合わせて、種類や色柄を選ぶのが基本です。

【Point:TPOを意識した着物選びが大切】

4.1 普段のお出かけに

紬や木綿の着物: 落ち着いた色合いや、さりげない柄のものがおすすめです。帯は角帯や兵児帯で、カジュアルな雰囲気に。足元は雪駄や、デザイン性の高い草履を合わせてもおしゃれです。

4.2 趣味の集まりに

少し個性的な柄の着物: 自分の趣味や好みを反映させた色柄の着物で、会話のきっかけを作るのも良いでしょう。帯や小物で遊び心をプラスするのも楽しいです。

4.3 結婚式やパーティーに

 色紋付羽織袴や一つ紋付: 格式を意識した装いが基本です。帯は格調高い柄の角帯を選び、白足袋に草履を合わせます。羽織紐も、礼装用のものを選びましょう。

4.4 夏祭りや花火大会に

浴衣: 清涼感のある素材や色柄を選びましょう。帯は浴衣の色柄や素材に合わせた角帯を合わせます。履物は下駄を素足で履くのが一般的です。

5.知っておくと役立つ。着物を長く楽しむためのお手入れ

お気に入りの着物を長く着るためには、適切なお手入れが大切です。

【Point:湿気と汚れに注意し、専門店でのメンテナンスも検討する】

5.1 着用後のお手入れ

風通しの良い場所で陰干しし、湿気を取り除きます。

汚れが付いている場合は、早めにシミ抜きやクリーニングします。最寄りの呉服店や着物クリーニング店に相談するといいでしょう。

畳んで保管する際は、たとう紙(着物専用の保存紙)に包んで、湿気の少ない場所に保管します。

5.2 シーズン終わりのお手入れ

汗や汚れが付着している可能性が高いので、専門店でのクリーニングをおすすめします。

着物用乾燥剤を活用しカビを防ぎます。

おわりに

ここまで、初めての男性の着物について、その種類から着方、選び方、お手入れまでをご紹介しました。

着物は、日本の伝統文化が息づく、奥深い魅力を持つ装いです。袖を通すことで、普段とは違う自分を発見したり、日本の美意識に触れたりする喜びを感じられるでしょう。

最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、一歩踏み出せば、きっと着物の持つ豊かな世界が広がります。まずは気軽に普段着の着物から挑戦して、着物のある生活を楽しんでみませんか?分からない事やお困り事などは、呉服の専門店で相談すると良いと思います。

この記事が、あなたの初めての着物体験をより豊かなものにする一助となれば幸いです。さあ、あなたも粋な和の装いを身にまとい、新しい自分と出会ってみましょう。

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